「青い鳥」  飯田 晃代さん (伊香牛2区)

 「あっ 青い鳥だ! あんなに さがしていた青い鳥は ぼくたちの家にいたんだ!」
チルチルとミチルがさがしていた青い鳥(幸福)は、自分の家の中にあった。このメーテルリンクの「青い鳥」を再び手にしたのは、東日本大震災直後のこと。
 大津波が、家を、車を呑みこんでいく映像を見た娘は、不安にかられていた。気持ちをおちつかせるため、私が子供の頃読んだ、世界の名作を読んで聞かせた。勇気が湧く、夢と希望の持てる内容を選んで、数日続けた読み聞かせ。 青い鳥を読み終えた時、子供の頃とまったく違う感想をもった。生活の問題・物欲の問題・未来の問題、これは人生哲学の本なのだ!
 「人生いかに生きたらいいのか」の探究の哲学が、象徴的に夢幻的に書かれている作品。心が救われた気がした。震災後多くの人が感じたと思うが、物質的に豊かなだけでは、真の幸福ではない。あの惨事を目にして、思い悩むこれからの生き方。
 真の幸福は、肉眼で見える華やかな生活の中にはなく、それを見ようとする心の目を開けて見ると、身近な生活の中に発見することができる。これからの生き方を考える機会を与えてくれた一冊となった。

(2011年8月号・広報とうま掲載文より・第57回エッセー)