「〔注〕犬“ソラ”の思うこと」安部克歳さん(4西3)

とあるブリーダーの元で2回子どもを設けた後「安部」の姓となって8年が経つ。仲間内では後期高齢の域か。この家では4代目、檻には大小2つの小屋があるがどちらもお古で身体にフィットしない。飼い主は好物のチャーハンを作ってくれるから大好きだが、家主には少々抵抗を感じる。相手が好いてくれればそれなりに対応の用意はできているつもり。大人だから。無口で無抵抗をいいことに絶対的服従を強いてくる。これって「アベ」の血筋?
趣味は「自主見学」。隙を突き、目を盗むため、日夜努力も重ねている。散歩が日課となるよう抗議のつもり。だが帰ってきてから家に入れない。目の前で近所の人がピンポーン!「お宅の犬が玄関の前で困ってますよ」いつぞやは派出所から「お宅のワンちゃん今、本官の前を通りました」結局家主のオヤツに釣られて叱られることになる。分かってはいるのだが。
肋が見える程痩せてはいるが、虐待を受けている訳ではない。生まれつき小食なだけ。カラスにだって餌を分けてやっている。決して食費が酒代に化けてはいない…と思う。一言、周りから責められ続ける家主の名誉のため。
暖かい日の朝は嬉しいことがある。庭の木に繋がれていると登校途中の子どもたちが遠くの方から走ってくる。「ソラちゃ~ん!」何故か、笑顔ができない。無関心を装って黙って撫でられるがまま。「気をつけて!」と言えないのがちょっと寂しい。せめて交通安全の黄色い旗でも首に巻いてくれれば、ささやかな意思表示になるのに。家主、区長さんに相談してくれないかなー。座ってるだけでボランティアの真似ができるんだよ。
“人”並みに。


(2017年7月号・広報とうま掲載文より・第122回エッセー)