2025年11月
「夢かなう」農と林が手を携えて クリーンラーチ苗木増産
10月17日、当麻町開明の町有林で道産マツ新品種「クリーンラーチ」植樹を関係者で行った。夢に見た日がついに訪れた。
クリーンラーチは、北海道立総合研究機構林業試験場(美唄市)が開発したグイマツとカラマツの交配種。カラマツに比べて二酸化炭素の吸収量が約20%多く、野ねずみなどの食害にも強い。成長が早く伐採まで約30年、樹高20メートルを超える見込みで材積も高く、循環型林業を目指す当麻町の新たな希望の木である。
期待を集める優良種苗クリーンラーチではあるが、苗木の増産や安定供給の難しさが課題であり、普及が進みづらい状況にあった。それならばと、当麻町では農と林の力を結集。当麻農協の育苗技術を強みに「さし木増殖」により生み出される幼苗を、当麻町森林組合が整備した苗圃(びょうほ)で30センチほどのコンテナ苗木に育成するもの。町は育苗に必要な機器導入など施設整備を支援してきた。
クリーンラーチ苗木を安定的に手にしたい当麻町森林組合の声かけでスタートした、全国初といわれる農林業連携のチャレンジ。試行錯誤を経て9,940本の苗が生育、そのうち約8,000本が今秋、町有林4ヘクタールへ植栽される。
「これほどまでに高度な知見と技術、情熱を持った人たちが当麻町にはいる」。
この取り組みの根底には、植樹会にも参集された各現場で汗を流す方々の力がある。本事業の主体者である当麻町森林組合からは小川原組合長、森林整備の職員のみなさん。福井組合長がけん引される当麻農協からは坂下専務、育苗管理の職員のみなさん。そして調整支援役の町役場林務スタッフ。さらには指導いただいた北海道庁のお力。一人ひとりの努力と情熱が、この挑戦を現実のものとした。
また、本事業には、関西スーパーマーケット(兵庫県伊丹市)をはじめとする、道内外の企業より、企業版ふるさと納税として多くの寄付も寄せられ、施設整備に活用させていただいた。持続可能な林業・農業振興はまさに一体的。深いご理解と共感、後押しのご支援に改めて厚くお礼を申し上げる。
当麻町が掲げてきた「食育・木育・花育」のまちづくりは、今、農と林が手を携える新たな段階に入った。地域に根ざした挑戦、当麻の大地に根を張るクリーンラーチの若木たちの成長は、私たちの未来そのもの、次代の希望となる。
これからも課題を乗り越え、一歩ずつ前へ進んでいく。
ともに挑み、未来を切り拓く、農と林の連携がもたらす力を信じて―。

当麻町長 村椿哲朗(広報紙我が郷土 令和7年11月号掲載)